経済的な理由で生活が苦しいなら、優先して削るべきなのは、たまに遊びにつかうお金(変動費)ではなく、毎月のように財布からでていくお金(固定費)です。
そして、固定費の中でも特に大きい割合を占めるのが「家賃」なのではないでしょうか。
それなら「家賃交渉」をして生活費を下げることを検討してみてはいかがでしょうか。
そうはいっても・・・
「家賃交渉って契約時のイベントでしょ?」
「もう入居しちゃったから意味ないよ!」
「そマ?後からでも交渉できるの?」
なんて疑問があるかもしれません。
家賃の値下げ交渉は、なにも入居時だけのイベントではありません。いやむしろ、入居後のほうが有利にすすめることができるのです。
本記事では、「入居後の家賃の値下げ交渉」を成功させるコツというテーマで、現役の大家が自分の経験をもとにご説明します。
本記事の要約
- 賃料よりも更新料のほうが値下げしやすい
- 交渉の際にマウントをとらない
- 物件が気に入っていることを伝える
- 部屋の欠点を交渉材料に使わない
タップできる目次
本記事で「入居中賃料」の値下げ交渉をテーマにする理由
家賃の値下げ交渉と聞いて思い浮かべるのは、部屋を借りるときではないでしょうか。
現役大家のわたしも、契約前の内見後に賃料の相談を受けたことはあります。もちろん金額次第ですが、値下げに応じることもありますし、そうでないときもあります。
さて、それでは入居後の値下げ交渉はどうでしょうか?
じつは、これまで10年近くの大家としての経験の中で、賃貸中に値下げの交渉をされたことは一度もありません。
どうやら世間一般的には、「家賃交渉は入居前にするもの」という固定観念があるようです。あるいは、「大家さんに面倒なひとだ思われたくない」という気持ちもあるのかもしれません。
でも、自分の気持ちに正直になってください。家賃は生活費の中でも大部分を占めるものです。少しでも安いほうがいいですよね。
実は・・・入居後は交渉に応じざるを得ない理由がある
大家の立場からすると(言ってしまうと自分の首を絞めますが・・・)、入居前よりも入居後の値下げ交渉の方が圧倒的に「交渉に応じざるを得ない」理由があります。
入居前よりも入居後の値下げ交渉の方が成功しやすい
まずは、その理由からご説明しましょう。
大家がもっとも嫌がる「空室」!まずはその理由を理解しよう
交渉を有利にすすめるために、まずは大家さんの気持ちを理解することから始めましょう。
さて、ここで問題です!
Q.「大家さんが最も嫌がること」は何でしょうか?
ただし、火事になったり人が亡くなったりすることを除きます。
「値下げ交渉」でもありません。
A.「空室」です。
大家さんにとっては、空室がもっとも嫌なことです。なぜなら、不動産賃貸業としての唯一の収入である「賃料」が入らないからです。
物件に投資した資金を少しでも早く回収したいので、空室期間は出来る限り短くしたいと考えます。
しかし、この答えは100点なのですが、その理由の説明は30点です。
じつは物件のオーナーが空室を嫌がる理由は他にもあります。
空室になると何が起きるかと言うと・・・
- 空室期間の機会損失(賃料◯ヶ月分)
- 退去後のクリーニング費用(賃料2ヶ月分)
- 客付け不動産業者への手数料(賃料2ヶ月分)
コレ全て損失になります。
たとえば、空室期間がたったの2ヶ月だったとしても、クリーニング費用と客付けの手数料をあわせて賃料6ヶ月分の損失が発生するわけです。空室期間が伸びれば更に損失は拡大します。
以上のような理由により、大家さんが最も恐れるのは「空室に客がつかないこと」ではなく、「賃貸中の部屋がこれから空室になること」ということになります。
これから空室になる物件は、既に空室の物件よりも3倍くらい怖い
賃料の値下げ交渉のタイミングとは?
値下げ交渉のベストなタイミングは・・・
そうです「契約更新」のときです。
部屋を賃貸契約するときに、一般的には2年ごとに更新する事が多いのではないでしょうか。
しかも「更新料」という謎の手数料?が追加されたりしますね。法律で決まっているわけではなく、不動産業界の悪い慣習のひとつです。
ですから、とうぜん更新のタイミングは入居者が出ていく可能性が高いです。不動産のオーナーは、2年に1回の更新ごとに心のなかで祈っているのです。
値下げ交渉するタイミングは、この更新期限の1〜2ヶ月前がベストです。
その理由は以下の2点です。
- 大家さんにも少し落ち着いて検討する時間が合ったほう良い結果になりやすい
- 更新期限ギリギリで退去をちらつかせると、あからさまな感じが出過ぎる
以上のように書きましたが、大家にとって退去はいつでも嫌なものです。
ですから、値下げ交渉のタイミングは「ぶっちゃけいつでも」構いません。
ただし、入居後すぐ(数ヶ月)で交渉をすると、「は?なんで?」っていうことにもなります。最低でも入居後1年は経ってからのほうが良いですね。
交渉タイミングのベストは契約更新の少し前、しかし何時でもいい。
値下げ交渉がしやすい条件・交渉しにくい条件
値下げ交渉がしやすい条件、交渉しにくい条件についてご説明します。
値下げ交渉がしにくい条件
説明の都合上、まずは値下げ交渉がしにくい条件からです。
- 賃貸アパートである
賃貸アパートの場合は、1棟全体が同じオーナーになります。
そのため、ひと部屋だけ家賃を下げてしまうと、ほかの部屋の家賃にも影響する可能性が高いからです。
もちろん1階と2階のように条件が違う部屋なら家賃に差があっても自然ですが、隣同士の部屋などでは家賃に差はつけにくいですね。となりが知り合い同士であれば、値下げは伝染します。
また、賃貸アパートはそもそも賃料が安いので下げる余地が少ないということもあります。
値下げ交渉がしやすい条件
値下げ交渉をしやすい条件のひとつが、上に書いた「契約更新のタイミング」ですが他にもあります。
たとえば・・・
- 賃貸需要の閑散期(繁忙期5月以降)
- 物件に魅力がない(特にワンルームや3点ユニットバス)
- 実需向けの区分マンション
- 周辺の家賃相場よりも高い
少し補足ご説明します。
実需向けの区分マンションというのは、自分で買って住むこと(実需)を前提としたマンションのことです。
このようなマンションは、まず家賃設定が高めになっているので値下げの余地があります。また、ひと部屋ごとにオーナーが別になっている(区分所有といいます)ので、アパートの家賃と違って「隣の部屋と違う家賃で構わない」から値下げがしやすいです。
実需向けと賃貸向けのマンションを確実に見分ける方法はありませんが、賃貸向けのマンションは「作りがとても安っぽい」のが特徴です。
この基準で判断すれば、「タワマン=実需向け」「ワンルームや3点ユニットバスのような狭小物件=賃貸向け」と判断できます。「1棟で300戸くらいの大規模なもの」もワンオーナーとは考えにくいので、実需向けの可能性が高いですね。
賃料の値下げ交渉の4つのコツ
ここから先は、大家としての経験をもとにした極秘情報です。
値下げ交渉の4つのコツについて、くわしくご説明しましょう。
コツ1.家賃の値下げにこだわらない
契約更新のタイミングであれば、賃料の値下げにこだわる必要はありません。更新料も値下げ交渉の材料につかえます。
賃料を下げにくい理由1.隣の部屋との賃料の格差
アパートの場合は、ご説明した通りひと部屋だけ値下げするのが難しかったりします。おとなりさん同士で賃料の差があると、値下げ交渉の材料にされます。
賃料を下げにくい理由2.賃貸物件としての価値も下がる
オーナーが物件の売却を検討しているかどうかにもよりますが、賃料の値下げをすると、収益物件としての価値が下がります。
たとえば、1棟6部屋のアパートを経営している場合を考えてみましょう。
ひと部屋の月額賃料が5万円だと満室だと年間360万円の物件があるとします。そのとき、年間の利回りを10%とすると、物件の売値はだいたい3600万円になります。
もしこの物件の賃料が下がって、月額賃料4万円になると、満室で年間288万円の収入になります。同じ年間利回り10%で計算すると、この物件の売値は2880万円に目減りしてしまいます。
上の例では、月額賃料を1万円下げただけで、アパートの価値が720万円も下がってしまいました。
大家にも大家なりの事情があるのです。
賃料の値下げは、物件価格の下落に直結するので、賃料をさげにくいこともある
以上のような理由から、月額の賃料よりも更新料のほうが値下げしやすいわけです。
値下げ交渉のときに、「賃料には満足しているけど、更新料がキツイ」ということを匂わせてみると効果的でしょう。
大家の経験からすると、更新料はボーナスのような感覚です。退去されることを考えれば、数万円くらいなら更新料を下げても良いかなと思います。
賃料よりも更新料の方が値下げ交渉しやすい
コツ2.要求ではなく相談する(マウントNG)
これは交渉相手が大家であっても、仲介している不動産業者であっても同じですね。
大家さんよりも賃借人のほうが交渉上は有利な立場にいます。しかし、だからといって「値下げして当然という態度」で交渉のテーブルにつくと話が決裂するでしょう。
ベストなのは、交渉であることを相手に悟られずに値下げまで持っていくことです。
そのためには、自分のほうが有利であることを表に出さずに、賃料や更新料の値下げを相談することです。
要求ではなく、相談というスタンスですね。
特に相手が個人の不動産オーナーであれば、困っているひとには助けになりたいと考えるものです。
相手も人間なのでマウントはNG、相談する感じならOK
コツ3.部屋を気に入っていることを伝える
オーナーとしては、長期で住んでもらえることは経営が安定しますので嬉しいです。
値下げ交渉のときであっても、部屋を気に入っていることを伝える方が有利になります。長期で住む可能性が高いことが伝わるからです。実際に長く住むかどうか、将来のことはわかりませんので、大家さんにそう感じてもらえるだけでいいです。
シンプルなことですが、超重要なポイントです。
できれば、交渉時には具体的に気に入っている理由を列挙しましょう。ただしウソっぽいのはダメです。どうしても部屋に魅力がないなら、住みやすい街であることを理由にしてもOKです。
大家さんに「長期で住んでもらえる住人」だと思ってもらうこと
コツ4.部屋の良くない点を交渉材料にしないこと
一番ダメなのは「物件の良くないところを交渉材料にしてしまうこと」です。たとえば、「駅から遠い」「部屋がせまい」「設備が古い」などなど。
「専門メディアでは、良くない点を訴えろ」と書いてあったりしますが、間違いです。
なぜなら、大家は物件に対して愛着をもっているからです。もちろん、欠点把握したうえでのことです。大家にとって物件とは、自分の子供のようなものだからです。
もしあなたが物件のオーナーだったとして、欠点を指摘されたうえに、あからさまに家賃の値下げ交渉をされたら、どう感じますか?
良い結果は見込めませんね。
わたしなら「不満があるなら、出ていってもらって構いません」と伝えます。そもそも、物件に対して不満を述べる入居者は、「どっちにしろ長くは住まないんだろうな」と思いますからね。
- 賃料よりも更新料のほうが値下げしやすい
- 交渉の際にマウントをとらない
- 物件が気に入っていることを伝える
- 部屋の欠点を交渉材料に使わない
値下げ交渉の例文(理由付け)
実際の値下げ交渉は、大家さんか仲介している不動産業者にまずは電話などで相談するのが一般的でしょう。
見出しには「例文」と書きましたが、本記事では「交渉の理由づけ」について例を挙げておきます。
交渉の基本は、マウントを取らないこと。物件を褒めること。
自分が武器を持っていないことをアピールしつつ、お腹を見せて猫のようにゴロニャンできれば、交渉は成功したも同然。
あとは、それらしい具体的な理由を述べるだけです。
- 会社の通勤先が変わるかもしれない(でもこの街が好きだ)
- 大学の通学先キャンパスが変わる(でもこの街が好きだ)
- 賃料の負担がきついので実家に戻ろうか迷っている(更新のタイミングで)
- 大学の勉強が忙しくなり、バイトなどの収入が減ってしまった(困ってる)
- 隣の部屋も同じ間取りなのに賃料が安い(実際にそうなら言ってもOK)
やっぱり収入が減ったというのが、いちばんストレートで自然な理由になります。
ちなみに、本当に何らかの理由で収入が減って困っているのであれば、すぐに素直に相談してみても問題ないでしょう。
「収入減などを理由に引っ越しを検討」すれば自然な理由になる
値下げ交渉はいくらが妥当か?
個々の物件の事情によりますのでなんとも言えませんが、個人的には賃料の10%までなら交渉の余地があると思います。
月額10万円なら1万円、月額7万円なら7千円くらいです。
不動産賃貸はもともとの利益が多くはないので、たった10%であっても大家としては「インパクト大」です。
(´;ω;`)
大家さんをあまりイジメないでください。
実際はその半分くらいまでの値下げに応じることで、空室を回避できるなら大家さん的には結果オーライと感じますね。
最大でも賃料の10%くらいを目安にしてみてはどうか
値下げ交渉の相手はだれ?
値下げ交渉の相手が、大家さんなのか仲介している管理会社なのかは個々の契約によります。
あいてが不明な場合は、賃料の振込先に連絡してみましょう。
まとめ
本記事では、入居後の賃料の値下げ交渉のコツについてご説明してみました。
もし大家仲間がいたら袋叩きに合うかもしれませんが、幸い仲間はいないので大丈夫そうです。
- 賃料よりも更新料のほうが値下げしやすい
- 交渉の際にマウントをとらない
- 物件が気に入っていることを伝える
- 部屋の欠点を交渉材料に使わない
ほかにも生活費を節約するテクニックについて、たくさん記事を書いています。
▼ボロ戸建てを買って住むほうが更にお得です。