住宅に関する定番の「賃貸vs持ち家」という論争は昔からありまして、いまだに決着がついていないように思います。
- 住宅ローンを組んでマイホームを購入するのが良いか
- 賃貸物件に住んで賃料を払い続けるのが良いか
という2択になりますが、ググってみるとクソ記事やウソ情報であふれて返っていることに気がつきました。
本記事では、「賃貸vs持ち家」対決について終止符を打つために、自宅や賃貸用物件を売買した経験のある本ブログ管理人が、中立の立場から意見を述べたいと思います。
本記事の対象読者
- 賃貸にするか持ち家にするか迷っているひと
- 持ち家を買いたいが最後の一歩が踏み出せないひと
タップできる目次
これまでの「賃貸vs持ち家」論争がスッキリしない理由、本ブログのほうが現実的な議論ができる理由
賃貸vs持ち家 というキーワードでググってみて、上位いくつかのウェブサイトを確認したところでは、やっぱりスッキリしない答えが多いです。
ちまたの「賃貸vs持ち家」論争がスッキリしない理由
この論争が決着しないのは、主に以下の3つの理由に帰着すると考えます。
理由その①:論じているメディアが中立の立場でない
賃貸情報サイトだったり、不動産売買サイトやハウスメーカーだったりするので、そもそも結論ありきで議論しているといったことがよくあります。
自社の営業に対して利害関係があるので、中立な立場で議論できるはずもなく、そのため、結論に導くための偏った見方やこじつけになっていたりします。
理由その②:不動産売買や賃貸業を経験したことがないライターが適当な記事を書いている
実際に物件の売買や賃貸業をしているひとからすると、そういった経験がないひとが書いた記事はすぐにわかります。
記事の内容が想像でできているので薄っぺらいうえに説得力がありません。
ほぼ妄想レベル、犯罪レベルのひどい記事も沢山あります。
理由その③:読者の参考にならないような金持ちインフルエンサーが自分の価値観のみで語っている
たとえば、勝間一代さんやホリエモンのようなお金を持っている人に多いのがこのタイプです。
お金よりも自分の時間や自由さを重視を優先できるので、自由に住む場所を変えられる「賃貸派」の意見のみをゴリ押しします。
このパターンの意見は、「持ち家側の条件」はなぜか新築の戸建や高級マンションに限られていて、中古物件は選択肢に入れずにコストについて語っています。
ちまたの「賃貸vs持ち家」論争のクソ記事例
以上のように、そもそも中立な立場にないメディア、物件購入や賃貸に関する知識がない記者、読者とはかけ離れた価値観のインフルエンサーなどが論じているので、ググっても役に立つ情報が手に入らないわけです。
特定のメディアを非難したくはないのですが、ひどいなーと感じたのは文春オンラインのコチラの記事「「賃貸」VS「持ち家」のくだらない論争はそろそろやめにしよう」です。
文章は誤記が多く、ライターはおそらく物件売買の経験ないと思われ、的外れな見解が多い。論理的な議論は一切なく、感情論ばかりの内容なので正にクソ記事にふさわしい内容でした。
本ブログの方が現実的な議論ができる理由
わたしは以下の理由により、ほかのメディアの記事より多少は的を射た記事を書けるのではないかと考えました。
- 中立な立場で議論ができる
- 不動産物件の購入や賃貸業の経験が多少なりともある
- 金銭面の価値観が読者に近い
「賃貸vs持ち家」の議論の本質と結論
わたしが考える、賃貸vs持ち家の議論の本質と結論を先に書きたいと思います。
賃貸vs持ち家の議論の本質
この議論の本質は、「賃貸コスト」と「持ち家リスク」のトレードオフということになります。
つまり、以下の2択の問題に帰着します。
- 賃貸物件に住んで総コストが増える代わりに、将来の柔軟性を得るか
- 持ち家に住んで総コストを削減する代わりに、将来の柔軟性を捨てるか
言い換えると、コストを重視するか、将来の生活の柔軟性(自由)を重視するか次第であるということになります。
賃貸vs持ち家の議論の結論
結論にしてしまうとつまらないのですが、先に書きます。
賃貸を選ぶか・持ち家を選ぶか、もちろん選択は個人の自由ですが、判断基準を以下のように考えましょうというというのがわたしの結論です。
上に書いた「議論の本質」を反映したシンプルな結論だと思います。
■将来にわたってお金に余裕がある・その確信があるひと
将来にわたってお金に余裕がある場合は、賃貸住宅を選んでも良いと思います。コストと引き換えに気軽で柔軟なライフスタイルを満喫できます。
■現時点や将来、お金に不安がある・不安を減らしたいひと
現時点や将来にわたって、お金に余裕がないのであれば、持ち家を選ぶのがよいと思います。特にコストを大きく削減して持ち家のリスクを軽減するには、中古(できれば築古)の戸建てを購入して、早めに完済することです。持ち家リスクへの対処は本記事の後半に記載していますが、難しくないですし、十分対処できるものだと考えます。
議論の本質は、「コストとリスクのトレードオフ」の話なので、上のように判断するのが合理的です。
ただし、このままだと大雑把な結論なので、賃貸と持ち家のコスト構造の違いや、持ち家のリスクへの対処方法について検討してみたいと思います。
ご興味のある方は、ぜひ続きをご覧ください。
賃貸の方がコストが高いのは当たり前-コスト構造
賃貸vs持ち家の議論で必ず出てくるのは、将来支払うコストのシミュレーションです。
【大手不動産サイトSUUMO】の記事に見るシミュレーションの不備
本記事で同じような計算をしても仕方がないので、悪い例を引き合いに出します。
コチラのSUUMO(スーモ)の記事を見てみたところ、以下のようなコストシミュレーションになっていました。
- 50年間賃貸した場合の総コスト例 :8330万円
- 50年間持ち家の場合の総コスト例 :7630万円
SUUMOシミュレーションの不備①「持ち家=新築」というステレオタイプによるコスト水増し
持ち家として新築マンションを購入している点に不備があります。
賃貸物件は通常新築ではありませんから、コストを比較する上では平等ではありません。新築マンションには新築プレミアムがついてますから、買った瞬間に2割くらい価値が下がります。
「持ち家=新築」というステレオタイプがナンセンスです。
SUUMOシミュレーションの不備② 持ち家側の過剰なランニングコスト計算
わざわざランニングコストが高い「区分所有マンション」を選択しているうえに、過剰なランニングコストを見込んでいる点に不備があります。
更に言うと、区分所有マンションの内装のリフォーム費用としてはあり得ない金額のリフォーム費用を見込んでいる点がこじつけ。
おまけに住宅ローンの金利も店頭金利を採用しているので、現実的な金利より遥かに高いです。
持ち家側の条件を中古の戸建てにするだけで、総コストは4000万円台に下げることができたはずです。
大手の不動産サイトであるSUUMOですら、クソ記事を公開しているわけです。
賃貸物件に住むならコスト構造を理解しておいたほうがよい
賃貸物件に関わる利害関係者やコスト構造を知れば、賃貸コストと持ち家コストの差がもっと大きくなることが理解できると思います。
簡単に言うと、以下のような賃貸物件に関わる業者のコストや収益は、すべてあなたの賃料からまかなわれています。
- 賃貸物件の仲介業者のコスト(賃借人だけでなく大家もコストを支払っています)
- 空室後のリフォーム・クリーニング業者のコスト(賃料から支払います)
- 賃貸管理業者の管理コスト(賃借人の管理、滞納の催促とか)
- 不動産投資ローンの銀行金利
- 大家さんの収益
賃貸物件に住んでいるひとは、こういった「賃貸関連業者が生活できるだけのコストを賃料として余分に支払っている」ということをほとんど意識していないはずです。
なぜなら、上に書いた文春オンラインやSUUMOのコストシミュレーションのように、身の回りには大手メディアの歪められた情報しかないからです。
持ち家にすれば、これらの中間コストを一切払わなくて済むということになります。銀行の金利は残りますが、住宅ローンの金利は超優遇されているので、不動産投資ローンの金利とは比較にならないくらい安いです。
賃貸物件に住んでいるひとは、「賃貸関連業者が生活できるだけのコストを賃料として余分に支払っている」ということ。
本ブログ管理人の持ち家を例にしたコストシミュレーション
わたしは中古の戸建てを購入してリフォームして住んでいます。賃貸と持ち家のコストを比較するなら、同じ物件で比較したほうが公平です。
ためしに、わたしの自宅を例として、賃貸と持ち家でコスト比較してみます。
▼コスト比較に使う物件は、こちらの記事でご紹介した物件です。
比較に用いた物件の条件概要
物件をイメージしやすように、具体的な条件をつけておきましょう。
細かいので読み飛ばしていただいても構いません。
- 35年間の総コストで比較する
- 所在地は、横浜市○○区、最寄りは横浜駅から3駅、駅まで自転車10分、バス10分、徒歩25分
- 物件価格+初期費用は880万円(全額住宅ローン)
- 駐車場なし(近隣に1万円/月以下の月極駐車場あり)
- 約55㎡(親子3人までなら可だがやや狭い)
- 賃料目安 6.2万円 ※SUUMOで検索した家賃相場を参考に
- 住宅ローンは年利0.7%で35年ローン(逆に5年・10年で短期返済すると持ち家のほうがさらに有利になります)
上に書いたわたしの物件に近い条件の賃貸物件をSUUMOで探して、賃料の目安とします。


コスト比較の結論
先にコスト比較した結果を記載します。35年間の総コストの概算です。
築古の中古戸建で、広さにも制約のある家なので総コストは低めになっていますが、賃貸と持ち家を同じ物件で平等に比較した結果です。持ち家のコストは、賃貸の6割くらいで済みそうです。
- 35年間賃貸した場合の総コスト例:2709万円
- 35年間持ち家の場合の総コスト例:1575万円
以上のように、同じ物件で賃貸と持ち家のコストを比較するとかなりの差がつくことがわかります。
そうはいっても、こんな家にずっと住み続けることはできないだろうというご意見もあると思います。それこそが持ち家のリスクというもので、コストが安い代わりに引き受けたリスクということになります。
コスト計算ー詳細説明
上でご説明したコスト比較の結果を導くための計算を記載していますので、読み飛ばしていただいても構いません。
【賃貸の場合のコスト計算】
・1年のコスト
6.2万円/月(月額賃料)x12ヵ月=74.4万円/年
・35年のコスト
74.4万円/年x35年+更新料6.2万円/回x17回=2709万円
【持ち家の場合のコスト計算】 ※こちらの記事より抜粋
・1年のコスト
35万円/年(住宅ローンと固定資産税)+10万円(修繕積立)=45万円/年
・35年のコスト
45万円/年x35年=1575万円
賃貸物件のコスト構造と上のシミュレーションからわかるように、必ず持ち家の方が総コストを抑えることができます。
上の計算では4割くらい持ち家のほうが安くなりましたが、不動産投資の経験からしても3割くらいは持ち家のほうが安くなると感じています。
そうでなければ、世の中の賃貸業が成り立たなくなるからです。
持ち家のデメリットとは何か?ほぼすべて対処できます
持ち家の方が圧倒的にコストメリットがあるのはわかったけど、デメリットもあるでしょ?
というご意見もあると思います。
ここからは、ちまたの記事に書かれている「持ち家派のデメリット」への対処法についてご説明します。
個人的な見解ですが、持ち家のデメリットのほぼすべてに対処できます。
引っ越しが気軽にできない、というデメリットへの対処
サラリーマンの場合は、転勤になったときに持ち家だと困るという意見があります。(だいたい賃貸推進派の意見ですが・・・)
結論としては、引越し先で賃貸物件に住みつつ、持ち家を賃貸に出してその賃料でローンの返済をすることができます。
本来であれば、住宅ローンが完済していないと賃貸に出すことはできませんが、転勤などのやむを得ない事情であれば、銀行は賃貸に出すことを了承してくれます。
そして、転勤から戻ってくればもとの家に住むことができます。
似たような例としては、高齢の両親が倒れたので看病するなど、家族の事情で引っ越しする場合でも同様の措置が望めます。
絶対にやめた方がいいのは、住宅ローンが残っている状態なのに銀行に黙って賃貸に出すことです。
住宅ローンが残っている物件を銀行に黙って賃貸に出すと、ローンの一括返済を求められる可能性があります。
転勤などの理由がある場合は、正直に説明すればOKです。
建物や住宅設備を自分で修理しなければならない、というデメリットへの対処
SUUMOの記事で持ち家のデメリットとして挙げられていたもので、持ち家は修繕コストがかかるというデメリットなのですが、反論する必要すらありません。
前の章で説明した賃貸物件のコスト構造にあるように、リフォーム等のコストは賃貸物件ならば当然ながら賃料に含まれています。
ですから、住宅の修繕費用を持ち家のデメリットとして挙げること自体が間違いで、むしろ賃貸の方がこういった見えないコストを余分に取られていることの方が多いです。
買うときの費用負担が大きい、というデメリットへの対処
マイホームを購入するときの初期費用は、物件価格によりますが100万円くらいあればなんとかなります。
中古物件の場合、交渉次第ではリフォーム費用も含めてすべて住宅ローンに含めることができる可能性もありますが、50万円くらいの諸費用くらいは現金で用意してほしいと銀行に言われるように思います。
この100万円という金額は小さくありませんが、これを理由に持ち家は費用負担が大きいという議論は間違っていると思います。
将来の1000万円、2000万円のコスト削減の話をしているときに、目先の100万円を惜しむような考え方では、一生自由な暮らしはできません。
100万円をどうしても用意することができないくらギリギリの生活をしているなら、親族に借りるか実家に住みながら働けば工面できるはずです。
30・35年など長期のローンを組むのはリスクである、というデメリットへの対処
完全に固定観念・思い込みで、不動産に対する理解が浅いです。
住宅ローンは必ずしも長期で組む必要はないですし、築古の中古なら10年ローン、5年ローンでの完済も可能です。
例えば
築古の中古を購入→短期間で完済→次の物件を購入→短期間で完済→・・・
というスキームを繰り返すことで、金利の安い住宅ローンを合法的に何度も使い倒す「ヤドカリ投資法」を実践するという手もあります。
住宅ローンを短期で返済する計画をたてれば、数年単位で自宅を住み替えることができるので、自分のライフスタイルの変化に柔軟に合わせることができます。
▼ヤドカリ投資法について、以下の記事で解説しています
家族構成が変わったら住み替えられない、というデメリットへの対処
持ち家のデメリットとしては、もっともらしく聞こえますが、これも上のヤドカリ投資法で解決できます。
再度書きますが、ヤドカリ投資法とは
築古の中古を購入→短期間で完済→次の物件を購入→短期間で完済→・・・
というように、住宅ローンを合法的に何度も使えるという方法です。
自分がいま独身ならば、5年~10年で完済できそうな、小さめの中古の戸建て・区分所有マンションを購入して、無駄遣いを減らして繰り上げしつつ短期で返済する。
結婚が見えてきたら、夫婦と子供が住めるくらいの中くらいの中古の戸建てを購入して、10年で完済する。1件目の賃料収入があるので返済は早いです。
というように、ライフスタイルの変化を予測しながら物件を購入すればOKです。
将来家を売りたくなっても売れない、損失が出るのではないか、という不安への対処
適正価格なら物件が売れないという不安はない
一般的に住宅が売れないといわれるのは、たとえば郊外に建てた新築の戸建を売るときに、自分が購入したときの金額を意識した間違った値付けをしている場合などです。
残念ながら、中古になってしまった「こだわりの新築戸建」には、ほかの人にとってそれほど価値がありません。
わたしの不動産売買の経験からいえるのは、「物件の価値に見合った価格ならば必ず買い手が現れる」ということです。
郊外に新築の戸建て注文住宅などを購入する場合は、購入した瞬間に2~3割価値が目減りするので、相当の覚悟をしておいたほうがよいです。
新築に住みたいならば、賃貸に住むのと同じように、コスト面での覚悟が必要です。
価格が落ち着いている中古物件であれば、建物の老朽化にあわせて緩やかに価格が下降するのが普通です。
ですから、自分が売るときも購入時と同じか少し安いくらいの価格で売却できる可能性が高いです。
仮に持ち家を手放すことになったら?
もし価格が十分に落ち着いた物件であれば、持ち家を手放すことにまったく不安はありません。
物件を仮に数年で手放すことになったとしても、物件の売却価格は購入時の価格とほぼ同じです。
この場合、媒介手数料を不動産業者に支払う分が損失になりますが、例えば上で紹介したわたしの物件ならば100万円くらいの損失なので、手放すまでの数年間の家賃だったと考えれば、むしろ得をしていることがわかります。
中古物件であっても3年などの短期で売却することがわかっているなら、賃貸にすべきです。
まとめ
本記事では、「賃貸vs持ち家」論争に終止符を打つために、不動産売買や賃貸事業の経験をもとにわたしなりの見解を書いてみましたが、いかがだったでしょうか。
改めて、結論を本記事のまとめとさせていただきます。
■将来にわたってお金に余裕がある・その確信があるひと
将来にわたってお金に余裕がある場合は、賃貸住宅を選んでも良いと思います。コストと引き換えに気軽で柔軟なライフスタイルを満喫できます。
■現時点や将来、お金に不安がある・不安を減らしたいひと
現時点や将来にわたって、お金に余裕がないのであれば、持ち家を選ぶのがよいと思います。特にコストを大きく削減して持ち家のリスクを軽減するには、中古(できれば築古)の戸建てを購入して、早めに完済することです。持ち家リスクへの対処は本記事の後半に記載していますが、難しくないですし、十分対処できるものだと考えます。