書評

【書評】インデックス運用実践ガイド『全面改訂 ほったらかし投資術』

本記事でご紹介する本のタイトルは、コチラです。

出版社 :朝日新聞出版(2015/6/12)

著者  :山崎元、水瀬ケンイチ

タイトル:全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド

著者情報

本書の著者の紹介です。

著者のひとりである山崎氏は、資産運用やマーケットにコメントする仕事をしている関係から、自分の資産をリスク商品にほとんど投資していません。一方で、もうひとりの著者である水瀬ケンイチ氏は、本書で紹介する「インデックス投資信託」をしている個人投資家として、経験をもとに実践的な知識を紹介しています。

本書は、金融の専門家として理論を担当する山崎氏と、個人投資家として経験談を担当する水瀬氏が、お互いに補い合うことで成り立っています。本書では、紹介しているインデックス運用の「理論」と「実践」について、両方を学ぶことができるのが特徴といえます。

山崎 元(やまざき はじめ)

山崎 元氏は、経済評論家と同時に楽天証券の社員です。大学卒業後、総合商社に就職しましたが、その後、国内系・外資系の投信運用会社、生命保険会社、信託銀行、投資顧問会社、証券会社、シンクタンクなどで、ファンドマネジャーやアナリスト、コンサルタントとして資産運用に関係する仕事をしてきました。本書では主に運用の理論の部分を書いています。

水瀬ケンイチ(みなせけんいち)

水瀬ケンイチ氏は、あるIT企業に勤めるサラリーマンであり、インデックス投資をテーマとしたブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」の管理人です。水瀬氏自身が本書で紹介するような方法で自分の資産を運用してきた投資家でもあります。

本書の特徴は?どんな人におススメの本?

本書のテーマ

最近の個人投資家の資産運用の王道は、「インデックス運用」になりつつあるように感じます。

書店の資産運用コーナーに行くと、並んでいる書籍の多くが、インデックス投資信託やETFのすばらしさを主張するものであることに気が付くでしょう。

本書の内容も、個人投資家にインデックス運用をすすめるものになっています。

インデックス運用とは?

インデックス運用とは、インデックス(指数)に連動する運用スタイルを指します。 例えば、日本株の代表的なインデックス(指数)である日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などに連動した値動きをするような運用をします。従って、市場の成長に連動した収益が期待できるのが特徴です。

それに対して、アクティブ運用は、上で説明したインデックスの収益を上回ることを目標として、個別の銘柄に投資を行う運用スタイルを指します。

本書の特徴

内容の難易度は、投資初心者が読んでも理解できる内容になっていますが、インデックス運用自体は、投資の初心者・上級者問わず、すべての個人投資家にとってベストな運用方法のひとつです。

そう考えると、どのレベルの個人投資家が読んでも良い内容といえます。

本書の特徴をいくつか挙げておきます。

  1. 著者の主張がハッキリしていてわかりやすい
  2. 理論を理解すれば誰でも実践できる
  3. 海外のインデックス運用の書籍と違って、DC(確定拠出年金)やNISAのような税制的にお得な日本の制度を具体的にどのように活用すればよいかを解説している

本書は2015年に出版されているので、情報としてはかなり古い内容になっています。

例えば、つみたてNISAをどのように活用すべきか、という観点の情報は一切ありません。また、本書内のおすすめの投資信託やETFなどの商品に関する情報は、既にだいぶ古いものになっています。

しかしながら、投資理論の本質的な部分は陳腐化する内容ではないですし、商品選定の考え方を理解すれば、知識として十分に役に立つ内容であることに変わりはありません。

管理人ヤギ

おすすめの金融商品を参考にするのではなくて、有利な商品を自分で選ぶための知識を身につけよう!!

本書で印象に残った内容のご紹介

続いて、本書のなかで特に印象に残った部分について、本文を引用しつつご説明します。

リスク資産に投資する2つの方法ー「積み立て投資」か「一括投資」か

インデックス運用の実践的な方法としては、毎月の給与から天引きするような積み立て投資が一般的です。それ自体を本書で否定していませんし、推奨してもいます。

以下の引用部分で議論の対象になっているのは、リスク資産(株式の投資信託など)に回すことができる資金がすでに手元にある場合に、それを分割して投資に回すべきか?、それとも一括で投資に回すべきか?という話です。

【本書引用】

しかし、ドルコスト平均法を含めて「時間分散」を行う投資法は、投資すべき資金が既にあり、最適な投資額が決まっているとすると、時間・手間・コストがそれぞれ余計にかかるのと共に、投資が完了するまでの期間に十分機会を利用できない「機会コスト」もかかるので、「気休めにはなっても、合理的ではない方法」です。

既に運用資金をお持ちの方は、どの道「いいタイミング」など分からない中で平均的に有利だと思うからリスク資産に投資するのですから、ご自分にとっての適正投資額を遠慮なく1回で投資してしまってください(「一括投資」)。

本書より引用

【本ブログ管理人の解釈】

これから資産運用を始めようというひとのなかには、運用に回せるまとまった資金があるというひともいるでしょう。その場合、何回かに分割して投資するか(時間分散)、一気に投資するか(一括分散)するかという疑問がうまれるかもしれません。

著者の山崎氏の主張では、「分割して投資するのは合理的ではない」と言っています。

わたしも、個人的にはこの見解に同意です。なぜなら、時間的に分散して積み立て投資しても、積み立て終わった時点でトータルの投資額は同じなので、運用資産に対するリスクは全く同じになります。それに対して、リターンを期待できる投資に回さずに手元に資金を置いておくことは、機会損失になるからです。

インデックスファンド、ETFはこうして選ぶ

続いて、インデックスファンド、EFTの選び方に関する記述です。

【本書引用】

商品選択の考え方さえ知っていれば、今後何年も経って、どんどん新しいインデックスファンドやETFが出てきたとしても、他人のおすすめに頼ることなく、自分で商品を選ぶことができるようになります。

本書より引用

【本ブログ管理人の解釈】

例えば、職場で新人や後輩に仕事を教えるときには、よくこんなことが言われます。

「魚をあげるのではなくて、魚の取り方を教えてやれ」

わたしは、資産運用にも全く同じことがいえると考えています。

本書を読んで身につけるべきなのは、有利な商品の「知識」を得るのではなくて、どうすれば有利な商品を選べるかという「知恵」です。投資信託やETFなどの商品は、数年もすると新しく有利なものができたり、無くなったりします。いま有利な商品を教えてもらったところで、数年後には状況が変わっている可能性があるからです。

わたしは、これが当たり前の考え方だと思うのですが、アマゾンの書評などを見ると、それを理解せずに書いてある情報の古さや本書の一部の記載のみを理由に、低い評価をつけるようなレビューも結構あるのが現実です。

本書に書かれている、「投資理論や商品の選び方」自体は陳腐化するものではないので、あえてこの部分をピックアップしました。

「リバランス」はどうするかー水瀬子規・年に1度行う

運用資産のリバランスについての記載です。

【本書引用】

こんな「ほったらかし投資」ですが、 年に1度だけはやらなければいけないこと があります。それが「リバランス」。最初に決めた目標アセットアロケーションからのずれを修正する作業です。まず、現時点のアセットアロケーションを計算します。そして、目標の比率よりも大きくなった(値上がりした)アセットクラスのファンドを売り、目標の比率よりも小さくなってしまった(値下がりした)アセットクラスのファンドを買い増します。そうすることによって、ポートフォリオのリスク量を一定に保つ ことができ、知らぬ間に過大なリスクを負ってしまうことを防ぎます。また同時に、リバランスは、好調なアセットクラスでの一部利益確定と、不調なアセットクラスでの割安な仕込みを行うことにもなるので、 リターンの改善に寄与する面もあります。

本書より引用

【本ブログ管理人の解釈】

積み立て投資を続けていると、アセットクラス(資産の分類のこと、国内株式、海外株式、国内債券、海外債券、現金など)のバランスが、当初決めた目標からずれてしまいます。

そのときに、調整するのが「リバランス」です。リバランスをする目的は、知らない間に大きなリスクを負っていたり、期待するリターンが小さくなることを防ぐことだと考えていました。

ところが水瀬氏いわく、好調なアセットクラスでの一部を利益確定して、その資金を不調なアセットクラスでの割安な仕込みを行うことでリターンが改善する面もあると言っています。

個人的には、将来の資産価値が上がるか・下がるかわからないリスク資産について、好調な資産を売って、不調な資産を購入することがよいという理論は、論理的に正しくはないように思います。実際、山崎氏もこの部分については、本書でコメントをしていません。

しかし、リバランスをした場合としなかった場合では、リバランスをしたほうがリターンが大きくなるという過去のデータも紹介されているので、そういう考えもあるかと感じた部分でした。

上記以外にもう一点、リバランス関連で気になったのは、「リバランスするときは、資産を売り買いするのではなくて、ボーナスなどの新規投資資金を用いて、資産割合が足りない部分に買い増しだけで調整するのがよい」と紹介されています。

これについては、わたしも良い方法だと思います。特に「NISA」や「つみたてNISA」の場合、いちど資産を売却したら、その運用の枠は再利用できなくなりますので、現実的に買い増しだけでしかリバランスできません。実践家ならではの実用的な方法論だと感じました。

考え方のヒント1・「リタイアした直後に大暴落にあったらすべてが水の泡」ではない

最後に、インデックス運用資産の取り崩し方法に関するお話です。

【本書引用】

自分がリタイアした直後に大暴落にあわないか不安だという意見です。

(中略)

たとえば、会社をリタイアする 65 歳以降に資産を取り崩していこうという場合、 65 歳時点ですべての資産を一気に売却して、現金化する方は少数だと思います。厚生労働省「平成 25 年簡易生命表」によると、 65 歳まで生きた人の平均余命は 19 年あるそうです。リタイア後も、 19 年間運用しながら、取り崩していくことになります。  長い時間をかけて積み立ててきたように、取り崩しもまた、長い時間をかけて運用しながら行うと考えれば、挽回の時間は、皆さんが思っているよりはだいぶ長いでしょう。「100年に一度」と言われたリーマン・ショックでも、「1000年に一度」と言われた東日本大震災でも、株価は一時的に暴落しましたが、その後5年も経たないうちに回復してしまいました。少なくとも、「リタイア直後の一発ですべてが水の泡」というわけではありません。

本書より引用

【本ブログ管理人の解釈】

インデックス運用に関する書籍はたくさんありますが、長期運用した後の資産の取り崩し方法について明確に書いてあるものは少ないです。

確かに、リタイア直後に大暴落するという可能性は現実にありますし、心配になる気持ちもわかります。ですが、取り崩し方の答えもきちんとフォローされていますので、本記事でピックアップしました。

まとめ

本書は、すべての投資家にとって有益な内容になっていて、日本の個人投資家がインデックス運用をするための手引きといえます。

確定拠出年金やNISAなどの制度を見ても、投資信託による資産運用がひとつのベストな資産運用方法であることは確かです。

たった数百円で自分の将来が大きく変わるのであれば、安い買い物ではないでしょうか。

▼つみたてNISAの運用成績をこちらで公開しています